- 食米で造る吟醸酒
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2020.09.17 Thursday
9月には、気比神宮の敦賀祭り、小浜のほうぜ祭りなどは関西方面から多数の見物客がくるほどの大きな祭り。地元の鳥浜でも11、12日には神輿が練り歩く祭りが有ります。
どの祭りも、米の豊作を祈願することが主になります。すでに刈り入れが始まっていますが、この取れた米で日本酒ができます。
食米もあれば、大吟醸等に使う酒米も刈り入れが始まります……………
ところで話が代わりますが、酒米はいつごろから作られたのでしょうか?
今でこそ、いろんな試験場が有り意識的に酒米を造ることはあるでしょうが、昔は酒米より、食べて美味しい米の育成に力を入れていたと私は想像します。そんな中で、蔵元たちは、評判になった米を試してみたら上手くいった!といういのが現実的です。
そして、国立醸造試験所は1904(明治37年)に設立されていますので、このころからお酒に関する技術、知識が体系化され蓄積されてきます。
酒米の研究も進むわけですが、1923年(大正12年)に兵庫県明石市の兵庫県立農林水産技術総合センターで「山田穂」と「短稈渡船」を人工交配させて山田錦が誕生します。それから産地適応性の試験が行われ、1936年(昭和11年)に「山田錦」と名付けられ、兵庫県の奨励品種になります。
そして、山田錦は酒米の王様として、日本中の酒蔵で使われるようになるわけですが、酒米の進化と醸造技術の進化ともう一つ大きな進化がありました。
それは動力式精米機の開発と進化です。
精米機の開発は1896年(明治29年)であり、国立醸造試験所の設立よりも早いのです。そして手を加え続けられ、1930年(昭和5年)に精米歩合の能力が飛躍的に向上し40%まで精米できるようになりました。
お酒の醸造技術の蓄積
酒米の研究による米の育成
精米機の飛躍的な進歩
これらの事が相まって、吟醸酒というお酒が造れるようになったのです。これで不味いわけは無いですね。
- 暑い中、稲は黙ってすくすく生長しています 後編
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2020.08.20 Thursday
前回の酒米の説明の続きになります。もし前回を見ていないようでしたら、そちらを見てからの方が理解しやすいと思います。
酒造好適米の条件 よく説明されていること・・・続き
4 吸水性が良いこと.・・・米を蒸す前の作業として、洗米し浸漬するわけですが、その時に米がどの程度水を吸ったかを管理しています。これを「吸水率」と言い一定の数値にするのですが、程よい速度で水が吸われる米を好みます。
5 外硬内軟性に優れていること・・・蒸した時に、外が硬く中が柔らかく仕上がる米を好みます。米の中が柔らかいのは、麹を造る時は菌糸が中に食い込み易くなるわけですが、外まで柔らかいと米同士がくっつき麹菌の繁殖を阻害します。
以上がよく説明されていることですが、あと一つ大事なことが有ります。前回で「3タンパク質、脂肪が少ないこと」を申し上げましたが、酒米にしても普通の米にしても主成分は、ほぼ変わりが有りません。
では、何が大きく違うのでしょうか?そして、なぜ私たちは高くても酒米を買い入れるのでしょうか?
米の大まかな構造は中心部にデンプンが集中し、タンパク質や脂肪、ミネラルは外側に多く存在している構造になっています。そして外側に多く存在しているタンパク質などが、お酒の味を決める成分なのですが、多すぎると雑味の元になります。
それでは質問です、雑味を抑えるにはどうするのか?……答えは米をたくさん磨くのです。外側に多く存在するタンパク質を削り落として、奇麗なお酒を造ることに専念するわけです。大吟醸なら半分磨きます。
さらに質問です、普通の米をたくさん磨いたらどうなるでしょうか?……お米になってみましょう。
さて精米が始まりました。米同士がぶつかり合い、お互いを削り合います。その時摩擦熱が発生し米の温度がどんどん上昇。
それに伴い米の水分が飛んでいきます。米の細胞の水分が無くなり、脆くなり、ついには……割れます!
割れた米では吸水率の正確な管理が出来ません。結果としてそれ以降の作業に信頼性がなく良いお酒を造れなくなります。これではお酒を造ることに生きがいすら感じなくなるでしょう。
たくさん磨いても割れづらい。
その磨いた米を水に浸けても割れづらい。
と言う特長に特化したものを酒米と称して、より品質の高いお酒を造るために、そして生きがいを感じるお酒を造るために、多少高くても購入するわけです。
- 暑い中、稲は黙ってすくすく生長しています
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2020.08.17 Monday
お盆が終わると、まだ8月なのに秋が来たような錯覚に陥り、酒米の稲刈りを連想している今日このごろ。
蔵見学のお客さまからの質問の中で、よく質問されることの一つに「酒米とふつうの米との違い」が有りますので今日はこの事をご説明したいと思います。
酒造好適米の条件 よく説明されていること
1 大粒であるこ・・・お米は沢山磨く程、雑味の少ないお酒が出来ることが知られているので、米の粒が大きいことが要求されます。これはお米1000粒の重量「千粒重」で指標化されており、一般の米が「千粒重」20〜25gに対して酒米の「千粒重」は25〜30gです。
2 心白が有ること・・・精米した酒米を見ると、中心部が乳白色に見えます。これは、米の内部に細かい空間が存在することで見え、これを「心白」と言います。では何故心白を必要とするのでしょうか?
これは、麹を造る時に影響が出ます。麹が成長を始めると、麹菌の菌糸、根が生えてきます。心白のような空間が有ると菌糸が米の中に食い込み易く、なるたけ菌糸を米の内部に生えさせたいと考えている私たちにとっては、うってつけなのです。
3 タンパク質、脂肪が少ないこと・・・タンパク質や脂肪はお酒の香味成分の元になるのですが、多すぎると雑味の元になってしまうので、少ない方が良しとされています。またこの成分は、米の外側程多く含まれているので、私たちは米を多く削ろうと考えるわけです。
まだ大事な部分の説明が残っているのですが、だいぶ長くなってしまったので、次回に回します。もし興味が有りましたら、次回のブログも読んで下さい。